NPO法人 「竹の子の会」

「竹の子の会」は、障がいのある子どもが地域でともに生きていくために、考え行動する親の会です

くらしのなかで思うこと

 子どもたちとともに成長していく私たち親は、うれしいこともたくさんあるけれど、悩むこともたくさんあります。その中で、今回は「成人式」「選挙」という節目の出来事にお便りをいただきました。

〈その1〉選挙に行ってきました。

 ダウン症の息子、現在20歳。昨年初めて投票に行ってきました。18歳で選挙権はあるのですが、うちの子は無理だろうと思い、考えもしませんでした。でも、ある会員のお母さんが期日前投票に行ったこと、字が書けなくても係りの人が代筆してくれること等を聞いて、何もせず諦めるのではなく、「だめもと!」でやってみようという気持ちになりました。

 まず、候補者の顔写真と名前が新聞に掲載されたのを切り抜いて食卓において、いつでも見られるようにしました。そして、ときどき「誰がいい?」と聞いて、選ぶことができるかどうかためしたら、ある日、ゆっくりではありましたが、ちゃんと指さして選びました。 注意したのは、「毎日しない」そして、やる場合も「1日に1~2回程度」。何度も聞くと嫌がると思ったので。

 次に、母が一人で期日前投票に行き、その場での様子を見に行きました。そして、日を改めて本人をつれて期日前投票に行きました。そこで、係りの人に本人のことを伝えました。「会話や字を書くことはできないが、『だれがいいですか?』と聞いたら、指さしで選べるかもしれない。3~4回聞いて何もしないようなら終了してください。」と・・。

 係りの人に付き添われて息子は静かに投票場へ。私は外で待ちました。結局、指で指すことはしなかったらしく、用紙はたぶん白紙のままだと思いますが、自分で投票箱に入れて、にこにこと笑顔で私のところへ来ました。係りの方の話では、3回程たずねたが行動を起こすことがなかったので、終わりましたとのこと。

 結局はできなかったことになるかもしれませんが、笑顔で戻った時の息子の顔が私には満足気に見えてとても印象に残っています。

 投票を終えて感じたことですが、記入するときの仕切りはもう少し広い方がいいかもしれない。車いすの人や係りの人が付き添う場合に、隣の人に迷惑をかけそうな気がします。それと、候補者の方の名前が前に張っていますが、新聞と同じように顔写真付きで文字がもう少し大きかったら、選べたかなと思いました。

次回、また、挑戦してみようと思っています。

(PS.投票に行くという本人の気持ちは確認ができないのに親の気持ちだけで先走ったのではないか、こういうやり方でよかったのだろうか・・など、気になっています。)会員 I

〈その2〉この日のために

 今年、Kさんが成人式だった。レンタルスーツに身を包み、成人の仲間入り。片足あげたポーズがなかなかのもの。式典の参加は見合わせたものの、同窓会には参加したらしい。

 同窓会では、かつての仲間たちがかつての笑顔のままに迎え入れてくれた。どんな話をしたのだろう。Kさんを真ん中に肩を組み、ピースする笑顔の写真から、楽しい時間が想像できる。

 それぞれにしっかりとした大人になった仲間たち。彼らの中に、Kさんと過ごした小学校、中学校での日々はどのように残っているのだろうか。福祉社会や共生社会などという大それた使命感ではなく、ちょっと手がかかる、でもいると楽しいKさんと一緒に過ごした日々があるだけかもしれない。でも、それでいいんだと思う。そんな当たり前の毎日が、きっとこれからの彼らをつくっていく。そんな経験のある子たちが、だれもが暮らしやすい社会をつくっていいってくれると信じている。

 この日のために、母は頑張った。戸惑い、時には「適切な教育」という言葉にゆれながらも、自分とKさんと、Kさんを囲む仲間たちを信じ進んでいった。成人の日を機に、Kさんと過ごした十年前の日々を思いつつ、改めて「共に」の大切さを思う。 会員A